理系大学院生のトビタテ留学記~日本人の98%がいかないかもしれないスロベニア~

#留学 #研究留学 #トビタテ #大学院生 #理系 #ヨーロッパ #スロベニア

世界に誇る鍾乳洞の町 ディヴァーチャ

 こんにちは、りょうです。スロベニアの今日の気温は、7℃!!!雨ということもあると思いますが、先週末まで比較的暖かかったのでとてもびっくりしています。体がついていけるか心配です、、、笑

 本格的に冬が近づいてきたヨーロッパですが現在、日本との時差はー8時間です。10月27日(木)をもって、2019年のサマータイムが終了し、これまでのー7時間という時差から1時間時差が長くなりました。サマータイムとは、一年のうち日照時間が長い夏の時間を有効活用するために標準時を1時間進めるというものです。期間としては、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日となっています。なんとサマータイムを実施している国では、一年のうち7ヶ月とサマータイムを適用している月の方が期間的に多いんですね。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031023401j:plain

高緯度であるヨーロッパにおいてサマータイムの導入には日没から就寝までの時間を強制的に1時間早めることで消費電力を抑えるという狙いもあります。また1948年から1951年までの間、日本でもサマータイムが導入されていたそうです。しかし北海道等を除き、緯度が比較的低い日本では夏と冬の日照時間の差が少ない上に、熱帯夜が多いので夜でもエアコンを稼働し、消費電力節約の効果も希薄であったために廃止されたそうです。しかし、サマータイムに体が適用するのに負担がかかることから睡眠不足等健康被害が生じること、省電力効果が思ったほど大きくなかったというデメリットからEUでは市民の約8割が反対姿勢を示し、欧州議会で2021年をもってサマータイムが廃止されるという法案が可決されました。

 僕は、これまでサマータイムという言葉は聞いたことはあったものの詳細についてはほとんど無知でした。朝起きて、スロベニア人の友人が「1時間長く寝ていたよ!」と言っていてなんだろう?と思って実際に調べてみるとこのようなことを知ることができました。何事にもアンテナを張り巡らせて好奇心を持つことは大切だなと思いました。知らぬ間に1時間多く寝れていたなんてなんだかラッキーな気持ちになれました笑

 さて、サマータイムのお話はこれくらいにしておいて今日はスロベニアの西にある小さな町「ディヴァーチャ」について皆さんに紹介したいと思います!

 ディヴァーチャは、僕の住むマリボルから南西におよそ200キロの距離にあります。バスでおよそ3時間半〜4時間の距離です。(以前紹介したスロベニアの首都であるリュブリャナからバスで1時間半くらいの距離です。)

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031023944j:plain

人口としては、わずか4000人程度の小さな市です。

          で!す!が!

このディヴァーチャには、以前スロベニアについてのブログでも紹介した"シュコツィアン洞窟群"があるのです!

 

1.シュコツィアン洞窟群

 シュコツィアン洞窟群は、1986年にユネスコ世界自然遺産に登録された洞窟群です。大きさとしては413haで東京ドーム約88個分という広大な大きさを誇ります。(僕自身東京ドームに行ったことがないのであまり想像がつきませんが笑)

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031024100j:plain

 シュコツィアン洞窟群内には、ドリーネと呼ばれる巨大な陥没孔や深さ200m以上、長さ6kmの地下川洞窟、滝などがあります。また、シュコツィアン洞窟群はカルスト地形研究史上、世界で最も知られた場所でカルストという言葉の語源になったほどです。カルスト地形について形成過程を表した図があったので紹介します。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031024143j:plain

 簡単にその過程を説明すると雨や地下水が岩石の中に侵入した後、岩石が微小ながら水に溶け込みます。これを岩石の浸食と言います。そうして地下に空洞(鍾乳洞)が形成されるのです。その後、岩石の浸食が進むにつれて天井が薄くなり、ついには崩壊してしまいます。この崩壊に伴いできた孔をドリーネと言い、その後複数のドリーネが連なり大規模な凹地を形成します。この地形をウバーレと言います。ウバーレが形成された後、凹地に土砂が沖積し、最終的にポリエと呼ばれる地形を形成します。ちなみに、日本にも山口県秋吉台という日本最大のカルスト台地があります。

 カルスト地形を成す鍾乳洞内には天井や地面から無数の石が生えています。これは、鍾乳洞の天井から滴が滴ることで形成されるもので、天井から生えているつららのようなものを鍾乳石、地面に落ちた滴により形成されたものを石筍と呼びます。天井から生えているものと地面から生えているもので名前が違うなんて面白いですね!また、中には鍾乳石と石筍とが繋がったものも見られます。これを石柱と呼ぶそうです。しかしこれら鍾乳石や石筍が成長する速度は非常遅く、この速度は洞窟内の水量や水質、成長過程により大きく異なるとされています。北米の石筍については、1cm成長するのに約240年〜2400年という途方もない時間を要すると言われています。石柱がどれほどの年月をかけてできたのかということを想像することができると思います。鍾乳洞ツアー中にあと数センチで鍾乳石と石筍がくっついて石柱になろうとしているものをみて、ガイドの人が「You have to come back in the next life.」と言って、みんなの関心を引いていたことを思い出します笑また、これら鍾乳石や石筍の色は、白やグレーなど様々で水に含まれるミネラル等の成分によって変化するそうです。

 鍾乳洞内は、ガイドの人によるツアーで見学を行います。僕は12時スタートの回に参加して、人数的には100人程度で3グループに別れて鍾乳洞内に入りました。ツアーは約1時間おきに開催され、学生であれば10ユーロ程度で参加することができます。鍾乳洞内は高さが低いところで約180cmになっていて、背が高い人はしゃがみながら進まなければならない場所もあります。また鍾乳洞内はあらゆる電子機器が使用禁止されており、撮影も禁止されています。鍾乳洞出口付近でのみ撮影が許可されます。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031024631j:plain

 鍾乳洞内を進むと川が流れている部分があり、かつて大雨による増水で90メートルまで川の水位が上昇したそうです。洞窟内には当時の水位を示す看板もあります。さらに洞窟内には、高さ約45mの橋などもあり、巨大かつ壮大な自然の創造物を自分の身で感じることができます!鍾乳洞内は薄暗く、異世界のような非現実的空間を約4キロ、1時間半程度のコースで味わうことができるので是非自分の足で訪れてみてください!

 

2.スロベニア映画博物館

 次に紹介するのは、スロベニア映画博物館です。スロベニア語でmuzej slovenskih filmskih igralcevと呼ばれる映画博物館になります。場所はディヴァーチャのバス停から徒歩で10分ほどのところです。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031024843j:plain

一見すると博物館には見えず、ただの民家のような建物です。しかし!この博物館、実はとてもすごい博物館なんです!始まりは、1998年にSlovenian Cinemathequeというユーゴスラビア時代の映画文化を研究する機関の一部門としての創設に遡ります。その後2011年にスロベニア出身の映画俳優博物館として展示スペースが拡大されました。またこの建物は、スロベニア初の映画スターであるIda Kravanja(舞台名:Ita Rina)の生家としても有名です。

 イタリナは、1907年にディヴァーチャのこの家で生まれ、1929年にErotikonというサイレント映画でデビューし、ヨーロッパはもとよりアメリカでも成功を遂げます。彼女はスロベニア初の映画スターなのです。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031025215j:plain

そんなイタリナは当時、ヨーロッパ映画産業の中心地であったベルリンに若くして移り住み、1930年にGallows toniというチェコ初のトーキー映画(いわゆる音声有りの一般的な映画)に出演します。その後、彼女にはハリウッドからのオファーが舞い込みます。しかし彼女はそれを断り結婚したことを期にセルビアの首都であるベルグラードに移住しました。そして第二次世界大戦後、いくつかのユーゴスラビア映画に出演しましたが全盛期であった1920年代のような名声は得られず、1979年にブドヴァというモンテネグロの海岸地帯で息を引き取り、ベルグラードに埋葬されました。

 博物館は大きく分けて二つの展示等に分けられており、イタリナの生家である建物は、およそ300年前に建てられ補強工事を施されながら現在も当時と変わらぬ姿で残っています。内部には彼女にまつわる写真等が壁一面に展示されています。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031025457j:plain

また、もう一つの展示等は当時、豚などの家畜を飼育する倉庫として使用されていたもので現在は、スロベニア出身の歴代全俳優や、スロベニア映画の歴史を見ることができる展示スペースになっています。中には、スロベニア最古の撮影機材や、スロベニアで初めて国際的賞を受賞したKekecという映画の展示などがあります。

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031025545j:plain

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031025627j:plain

館内には最新の機械が導入されており、スロベニア出身俳優の情報や出演作等をすぐに検索することができ、今も更新されているそうです。

 ディヴァーチャにもし訪れることがあれば是非立ち寄ってみてください!僕は、親しいスロベニア人友人の友人が博物館でアルバイトをしていたことからこの施設の存在を知ることになりましたが、日本語で検索してもその情報は、出てきません。個人的には博物館を観光で訪れた初めての日本人なのでは?なんて思ったりしました笑(住所: Kraška cesta 26, 6215 Divača, スロベニア

 さて、今回はスロベニアの西方に位置するディヴァーチャという小さな町を紹介させていただきました。小さいながらも歴史が詰まった非常に良い町だと思いました。また、位置的には、車で20分程度でイタリアに行くこともできるます。イタリアで有名な水の都ヴェネツィアからも車で2時間と比較的近いので、イタリアを訪れた際にでも立ち寄ってみると楽しいかもしれませんね!

それでは今日はこの辺で。

 

 おまけ(ディヴァーチャから車で10分ほど進んだリピチァという街で見た白馬)

f:id:ryo_japan_slovenia:20191031030301j:plain