理系大学院生のトビタテ留学記~日本人の98%がいかないかもしれないスロベニア~

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スロベニア留学を振り返って

 皆さんこんにちはりょうです。明けましておめでとうございます!遅すぎる。。。

報告が遅くなりましたが、2019年12月31日に無事日本に帰国しました。報告遅すぎる。。。

 僕は2019年の10月~12月の3か月間ヨーロッパのスロベニアという国に研究留学を行っていました。ブログには旅行のことしか投稿していないので「えっ?研究留学?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません(笑)実際、3か月という期間でヨーロッパ10か国、21都市(航空機経由地含む)を訪れました。冷静に考えるとすごいですね(笑)帰国してから、留学を経験した友人や先輩に話を聞いてもおそらく、一番多くの場所に旅行していると思います。現地の研究室のメンバーやスロベニア人の友人が「私たちのこれまでの人生よりもいろんなところに行ってるね!」と言っていたことを思い出します。

 さて、今回のブログでは、いつもの旅行記とは違って、留学を終えて1か月が経った今、留学を振り返って思うことについて皆さんとシェアできればなと思います。

 

 

 まず、このブログを開設したときにも行いましたが僕の簡単な自己紹介を行いたいと思います。

・名前:              りょう

・性別:              男

・年齢:              23歳

・職業:              大学院生(専攻は機械系)

・趣味:              旅行・映画鑑賞

 そうです、どこにでもいる普通の理系大学院生です。大学院生自体が世間一般から見たら希少な気はしますが。。。

 そんな僕が何故、留学をしよう!という気持ちになったのか。一言でいうと「留学ってかっこいい!」です。なんと薄っぺらい理由。。。しかし、これは本当のことです。

 

 

何故、留学をしようと思ったのか

 正直に言って、僕は自分のことを”無個性”だとずっと思ってきました。高校までは、地元の公立校に通い、人並みに勉強やスポーツをし、なんとなく、「一人暮らしをしたい!」という理由で特にやりたい学問があったわけでもなく当時の学力で入れるだろうという大学を選び、進学を機に地元を離れ、一人暮らしを始めました。大学受験に関しても、第一志望校には落ちてしまい、現在通っている大学には後期入試という形で入学をしました。ここまでの僕の経歴を聞くと、一人暮らしをしたいからなんとなく地元から離れて大学に進学するなんて、さぞ裕福な家庭の子だろうと思われる方も多いかもしれませんが、そんなことはありません。事実、私は大学進学後、実家からの仕送りは全く受けず、奨学金とアルバイトで学費や生活費をすべて賄っています。

 そして、その”無個性”は大学入学を機にさらに加速することになりました。大学というと自分のやりたい勉強やサークル、友達との飲み会など華々しいイメージを持つと思います。しかし、大学入学直後の僕は、第一志望校の受験に失敗したこと(それまでは、何事も最後にはどうにかなることが多く、僕にとって受験失敗は人生初の挫折?でした。)や特にやりたいことがあったわけでもなく、そのような華々しいイメージの大学生活を送りたいと思うようにはなりませんでした。もちろん、大学生活が全く楽しくなかったなんてことはなく、サークルには入りませんでしたが、彼女ができたり、アルバイトをしたり、仲のいい友人も数人でき、それなりに楽しむことは出来ていたと思います。しかし、周りの大学生を見ると、サークルに入って、学園祭で出店を出したり、仲間と旅行に行ったりとそれぞれがそれぞれに大学生活を楽しんでいたと思います。そのような周りを見て、僕は自分のことを改めて”無個性”だと思うようになりました。時には、そんなことを考えて、無気力状態になったこともありました。(小さいときから、何かと人と比べたり考えすぎてしまう癖がありました。)

 そんななか、私にとって一つ目の転機が大学三年生の時に訪れました。大学三年生というと一般的には就職活動の時期です。僕も例外ではなく、就職活動を行う時期でした。しかし、いざ就職活動を行おうと考えると、「大学時代がんばったことはなんですか?」「志望理由は何ですか?」「あなたの長所はなんですか?」といった類の質問に対してなんと答えていいのか全く分からない自分がそこにはいました。それも当然といえば当然、”無個性”にただ淡々と大学三年間を過ごしてきた僕にとって大学時代に頑張ったことなんていうものはありませんでした。そんな状態で将来、どうしようかと悩んでいるときに当時、働いていたアルバイト先の先輩から「大学院に進学したら?」とアドバイスをいただきました。その方は、私の4つ年上で同じ専攻(機械系)の先輩でした。僕が専攻していた学科では、卒業して就職する人と卒業後さらに2年間大学院に進学する人の主に二種類の人がいました。当初僕は、大学生活で多額の奨学金をかりていたこともあり、なるべく早く社会人として働き、奨学金を返済しなければという思いをもっており、大学院への進学ではなく、就職を考えていました。しかし、いざ就職活動を始めようとすると、自分をアピールすることが全くできず、先に進むことができない状況に困り果てていました。そんなときにその先輩からのアドバイスを聞き、大学院進学という選択肢を自分の中で考えるようになりました。その後いろいろと考え、「このまま就職活動しても内定なんて取れないだろうな。」という思いに至り、半ばてきとうな気持ちで大学院進学をすることにしました。

 大学院という組織は、座学を主とする大学とは違い、それぞれの学生が研究室に配属され研究活動を行い、その成果を論文として発表・提出することを一つの流れとして持っています。僕が専攻していた学科にはざっと10から15個くらいの研究室があり、学部3年の終了時に希望調査を取り、成績順でそれぞれ研究室に配属される形になっています。つまり、自分が行きたい研究室を自分で決めなければいけないということです。ここまでの文章を読んでいただいている方なら分かると思いますが、当然僕には、「この勉強がしたいんだ!」という目的意識はありませんでした。そんな状況で大学院進学を勧めてくださった先輩にお勧めの研究室を尋ねることにしました。そこでおすすめしていただいたのが現在所属している研究室です。現在、所属している研究室以外にもいくつかお勧めをしていただきましたが何故私は、今の研究室を第一希望としたのか。それは先輩のある一言が原因でした。「あの研究室は、毎年留学に行ってる学生がたくさんいるよ!」この時、僕の心で「留学ってかっこいい!」というこの言葉が浮かんだのです。その後、何とか第一希望が通り、大学四年時から現在の研究室に配属されました。僕の留学実現に向けた、最初のきっかけです。

 

たくさんの外国人たちとの出会い

 実際に研究室に配属されると、そこには一人の外国人研究者の方がいらっしゃいました。その方はインドからいらっしゃっていた女性の研究者でした。研究室紹介の場でその方が英語で自己紹介をしていましたが正直、何と言っているのかほとんど理解することができませんでした。高校時代は英語が得意科目だった僕にとって、自分の英語力の低さに正直、ショックを受けたのを覚えています。それ以降も、そのインド人研究者の方以外に中国やヨーロッパからたくさんの外国人研究者の方がたびたび来日し、講義や共同研究を行うといった毎日が続いていました。そんな中、GWの連休前に研究室の先輩から「連休明けにスロベニアから教授が来て、歓迎会と講義を予定している。」という連絡が入りました。僕が所属している研究室ではいくつか研究テーマがあり、僕はスロベニアの大学と長年、共同研究を行っている研究テーマで研究を行っていました。それは、スロベニアがヨーロッパにあって「留学するならヨーロッパがいいな」という憧れのようなものがあったことが大きな理由です。また、もう一つの理由としては、研究グループの先輩が自分と違うようなタイプだなと思ったからです。何故か研究テーマを選ぶときに、これまで関わってこなかった人と関わってみたいと思ったのです。

 連休明けにスロベニアから教授がいらっしゃり、講義が行われました。講義はもちろん全て英語で行われ、内容が専門的だったこともありましたがほとんど理解することは出来ませんでした。正直、この時は「こんなの分からないな。」と思っていました。講義後、教授の歓迎会を行いました。その席で、ある先輩が「スロベニアに留学に行きたい人は、教授と話してね。」と言いました。そこで僕は、教授と話をすることになりました。この時、外国人の方と面と向かって話をするという経験が乏しかった僕は何を話せば良いのか全く分からず、教授が話してくれていることを必死に理解しようと精一杯の状況でした。しかし、当然、話を理解することは難しく、先輩に何を話しているのかを尋ね、何とか自分の拙い英語力で会話をしようと試みました。もちろん自分が言いたいことをすべて伝えることは出来ませんでしたが、自分が伝えようとしていることを教授が理解してくれた時にこれまでにない達成感と「英語っておもしろいな。」という感情が自分に芽生えました。

 その後、教授が帰国後、留学について真剣に考えました。そこで僕は、「英語で会話をすることができれば世界中のいろんな人と話ができる。自分の知らない世界をもっと広げることができる。」という結論に至り、自分から担当教授に留学希望を申し出、スロベニアの教授に正式に招待状を発行していただく流れになりました。「留学ってかっこいい!」から「英語で会話をすることができれば世界中のいろんな人と話ができる。自分の知らない世界をもっと広げることができる。」に変化した瞬間です。 

 

トビタテ!留学JAPANとの出会い

 さて、留学先であるスロベニアの大学から招待状をいただき、留学へ向けて、本格的に動き出した僕ですが、次に行うことは、留学に向けての準備です。みなさん、留学と聞いて最初に何を思い浮かべますか?僕の場合は、「お金」でした。留学をしたいと思ったはいいものの実際に留学を行うとなると多額のお金が必要になります。そこで僕が考えたのは、留学奨学金の受給です。僕が今回、受給した奨学金トビタテ!留学JAPAN日本代表プロジェクト(以下、トビタテと呼びます。)です。プロジェクトのホームページにはこのような説明があります。“トビタテ!留学JAPANとは政府だけではなく、官民協働のもと社会総掛かりで取り組む「留学促進キャンペーン」です。”この説明だけでは分かりづらいと思うのでもう少し詳しく説明すると、このプロジェクトは、2013年10月に文部科学省が開始し、日本のすべての若者に向けた留学促進キャンペーンです。このプロジェクトの面白い点は、プロジェクトの主な財源が国の税金ではなく、一般人や企業からの寄付によるものだという点です。このプロジェクトの一つの目標として、2020年までにプロジェクト開始時の日本の学生留学人口(高校生・大学生)を倍増させ、将来グローバルに活躍できる人材を育成するというものがあります。この理念に共感した多くの人や企業から寄付を募り、プロジェクトを運用しているのです。代表的な寄付者には、ソフトバンク孫正義さんなど日本を代表する数々の著名人や企業が名を連ねています。

 何故、数ある奨学金の中から僕がトビタテを選んだのか。理由は二つあります。まずは冒頭から言っているようにお金についてです。トビタテでは、返済不要で留学先に応じて奨学金が与えられます。僕が留学したスロベニアでは、留学期間中に月12万円+留学前に留学準備金25万円が支給されました。他の奨学金もいくつか探してみましたが、返済不要でここまで充実した金銭的サポートを受けられる奨学金プロジェクトはなかなかありませんでした。二つ目は、トビタテ独自のコミュニティです。トビタテでは合格者をトビタテ生と呼び、留学前に事前研究、留学後に事後研修と呼ばれる会が催されます。多種多様な同世代の学生と話す機会、交流する機会というのもトビタテの大きな魅力だと思います。

 トビタテは年に二回募集があり、基本的には家計基準や学力基準は選考に影響を及ぼしません。つまり、プロジェクトコンセプトにあるように、すべての若者に平等にチャンスがあるのです。トビタテ生になるためには、一次審査(書類選考)と二次審査(面接、プレゼンテーション、グループディスカッション)の二つの審査に合格する必要があります。一次審査の合格者が文部科学省で行われる、二次審査に進む形になります。二次審査の面接は支援企業の方が行ってくださります。

 トビタテに関して、実は僕は一度、一次審査で落ちています。落ちた当時は正直、ショックでした。留学実現に向けて、自分の過去を振り返り、留学について真剣に自分に向き合った結果が不合格だったからです。不合格通知を受け取り、冷静になって、自分が書いた書類を読み返すと僕は一つのことに気が付きました。「英語を話せるようになりたい。」「英語が話せるとグローバルな人材になれる。」僕は書類の中でしきりに“英語”という言葉を使っていました。しかし、ここで一つある疑問が自分の中で浮かびました。「英語が話せればグローバル人材?」確かに英語は多々、世界の共通言語といわれ、世界で最も話されている言語といっても過言ではありません。しかし、冷静になって考えてみてください。世界にはおよそ70億人の人々が暮らしているといわれています。その中で英語を母国語として話す人は、約2割だといわれています。そうです、英語が話せたかといって、グローバル人材ではないのだと思います。僕の中では無意識に留学=英語という式が成り立っていました。しかし、そうではない。そこで、改めて、トビタテが求めているグローバル人材とはどんな人材なのか僕は自分なりに考えました。そして、たどり着いた僕の中での結論が「自らと異なる価値観をもつ人の集まりである集団の先頭に立ち、協力することで世界を良い方向に動かすことができる人材」です。価値観というのは人それぞれだと思います。そこには良いも悪いもないと僕は思います。何故なら価値観を形成する環境が人それぞれ違うからです。これは同じ日本人であっても言えると思います。例えば、一人で行動することが好きな人、友達と一緒に遊ぶことが好きな人。同じ日本人でも異なる価値観を持つのであれば国が違えば価値観が違うことは当たり前のことだと思います。日本での当たり前、自分の常識は、相手にとっての非常識だということを自覚することが大事だと思います。しかし、このように価値観が違う人々と協力することで自分一人では思いもつかなかったアプローチを考えつくことがあると思います。そんな時、その集団の先頭に立って、リーダーシップを取れる人材こそ、グローバル人材だと思いました。

 このことに気づいてから僕は、いろんな価値観に触れるために自分から進んで外国人の方と触れ合う機会を増やしました。具体的には、自分の大学に留学している留学生たちと交流する活動に参加したり、研究室が行っている国際交流プロジェクトにチューターとして参加したりしました。その中でアジアはもちろん、ヨーロッパやアメリカ、アフリカなど本当に世界中の人と交流を行いました。そして、彼ら、彼女らと交流していくうちに僕は、様々な価値観に触れました。宗教や文化、ものの考え方など自分の常識が通用しないことが多々ありました。最初は自分の常識が通じないということで困惑したこともありましたが、だんだん自分と違う価値観に触れることが楽しくなりました。正直、僕が交流していた留学生たちはみなさん日本語が堪能で、交流中もほとんど日本語で会話を行っていました。しかし、僕は、自分が以前よりもグローバル人材に少し近づいたと思いました。もちろん、留学を行う上でコミュニケーションツールとしての英語は必要だと思ったので僕はオンライン英会話を受講して、自らの英語力を向上させました。

 「英語で会話をすることができれば世界中のいろんな人と話ができる。自分の知らない世界をもっと広げることができる。」から「将来、グローバルに活躍することができる人材になりたい。」に変化したのです。

 トビタテに関しては、僕もプロジェクトのすべてを知っているわけではないので的確なアドバイスができるかは分かりませんが、いち合格者として、アドバイスがあります。それは、「目的をはっきりさせて、その目的達成へのプロセスを自分で計画する。自分、相手に嘘をつかない。」ということです。これまで、長年、”無個性”で目的意識を持たずに生活してきた僕は、留学そしてトビタテに出会うことができて、目的をもって、その目的に向けたプロセスを”自分で”考えることの大切さに気付くことができました。また同時に、嘘をつかないということの大事さにも気づくことができました。トビタテを申請している学生は本当に多種多様で、それぞれが個をしっかりと持っているなと思いました。正直、周りに比べて自分がちっぽけな存在だと思う瞬間も来るかもしれません。僕は、一時期そう思っていました。でも、価値観や目的は人それぞれ、違います。僕は、他人に自分をよく見せようと自分を偽ることはしたくありません。ありのままの自分を相手に伝え、ありのままの自分を一つの価値観として受け入れてもらうことが重要だと思っています。

 自分が何故、留学したいのかという目的。自分はこんな考え、価値観を持っているんだという自己分析を行うことがトビタテ合格、これからの人生にとって大事になってくるのかなと思います。なんか、トビタテに関して書いていたら、だんだんといろいろ思うことが多くなってきて、ブログが長くなってしまってました。。。

 

留学を終えて感じること

 さて、ブログも長くなってしまい、ここまで読んでくださっている人が果たしているのかどうかは別として、今回のブログを書くことで改めて、自分が何故、留学をしたのかについて考えなおすことができました。そして、留学を終えて、僕が留学から学んだことや今感じていることをいくつか皆さんにシェアして、今回のブログを終わりにしたいと思います。

 

人と比べることは自分の価値を低下させ、自分の時間を浪費する。

 まず、一つ目は、人と比べないことの重要さです。僕は、留学前トビタテを通して、人それぞれ異なる価値観があるということに気づきました。しかし、実際に留学を行い、このことをよりひしひしと感じることになりました。でも、この価値観の違いが僕にとって不快ではなく、むしろ新鮮で自分の世界を広げてくれたように感じています。

 例えば、スロベニアの大学生はほとんどの人が学校近くの寮に住んでいます。しかし、学生は週末になると決まって実家に帰省を行います。僕の友人もバスで片道4時間の道を毎週帰省していました。最初は、なぜそのようなことをするのか不思議に思っていましたが、一度友人の実家に遊びに行ったときにその答えが分かったような気がします。友人は家族に会うために毎週末、実家に帰省していたのです。友人のお母さんも「スロベニアでは家族のつながりが強いの。」とおっしゃっていました。僕も実家から離れた場所で一人暮らしをしていますが、自分を含め、自分の周りで毎週末、実家に帰省している人を一人も見たことはありません。また、仕事に関する考え方も日本とは違うように感じました。僕は留学中、現地の研究室に所属して研究活動を行いました。研究室では研究室メンバーが毎朝7時30~8時頃に出勤して、夕方15時から16時には帰宅するといったスタイルを取っていました。日によっては、昼頃から出勤したり、スポーツをするために昼過ぎに帰宅するような人もいらっしゃいました。また、印象的だったのは、普段16時頃に帰宅する研究員の方が、受け持つ授業のため18時頃帰宅していた時に、大学近くの道端で偶然すれ違い、彼は僕に向けて「finally(ようやく)」と声をかけてくれました。それぞれが決められた時間で効率よく作業を進め、帰宅するというスタイルでした。

 

自分で考えることの重要さ。   

 僕は、これまでどちらかというと誰かが敷いたレールの上をただ歩くというスタイルで生活をしていました。今回、留学を決意したことは自らの意思でしたが、実際に留学をしてみて、より一層、自分で考えることの重要さに気づくことができました。

 そのことに気づかされた出来事としては、実験準備の失敗があります。僕は、現地である実験を行う計画を立てていました。実験のためには現地の工場で、日本から持参したサンプルを実験用に加工する必要がありました。そこで現地職員の方と話し合い、加工を行うつもりでしたが、意見の相違が生まれてしまし、サンプルの加工ミスが原因で結果的に、予定していた実験が一部できなくなってしまいました。そこで僕は、日本の大学の担当教授に状況を説明し、どのようにすればいいのか意見を仰ぎました。そこで日本の担当教授からメールで言われた次の言葉がこれまでの僕の考えを改めさせてくれるきっかけになりました。「問題を先生に相談することで解決する姿勢はあまり関心しません。自分でどうしたいのか考えて、提案することが重要だと思います。だめなときは私からだめだと言います。」それまで、僕は、研究で困った時、まず教授に次にどのようにすればいいか尋ねるというスタンスを取っていました。しかし、このメールを受け取りしばらくしてから、ふと思いました。「教授もすべてのことを知っているわけではない。まずは、自分で問題について考え、”自分が”どうしたいのかを伝えることが重要だ。」それからというもの僕はまず、自分で考えることを意識するようになりました。このことを意識してから、自ら進んで研究に取り組むことで、以前より深い知識を身に着けることはもちろん、自分の言動に責任をもつようになりました。何より、自ら主体的に研究に取り組むことができるようになりました。研究以外でも、これまではあまり自分の意見を持たず、他人の意見に流されることが多くありましたが、現在は自分で考え、自分の意見をきちんと人に伝えることを意識しています。

 

やらないことを決める。チームでの自分の役割を考えて行動する。

 僕はいま、日常生活を送るうえで“やらないことを決める”ということを意識しています。僕は以前、毎日のやることリストというものを作って生活を行っていました。しかし、計画を立てるということに満足して、結果的には計画の半分も達成できないまま、一日を終えることがほとんどでした。その原因について考えると、自分がやらないでいいことに時間を割きすぎていたという結論に至りました。詳しく説明すると、自分の作業中に人から話しかけられたり、何か作業を頼まれた時、以前の僕は、仮に自分の作業をしているもしくは一日の作業計画が終わっていないにも関わらず頼まれた作業を優先的に行うという傾向にありました。人の目を気にしていたのだと思います。同時に作業を一人で抱え込みすぎてしまう癖も作業の効率を悪くしていた原因だと思います。しかし、ここで重要なことは、「今、言われた作業は優先度が本当に高いのか、今やっている作業と天秤にかけてどちらが重要か。自分ではなく、他の人に頼むことはできないのか。」ということをまず考えることだと思います。

 このことを意識してから僕は、作業中に声をかけられても、「ちょっと待って。」といえるようになり、もし自分のほかに適任な人がいる場合は、その人に声をかける等して、できるだけ自分が行わなくてもいいことに自分の時間を浪費しないように心がけるようになりました。こうすることで自分は本来予定していた、優先度の高い作業を行うことができ、計画を達成できる日が増えました。ここで重要になってくるのが、日頃の人間関係の構築です。他の人にも僕と同じように限られた時間があります。人は皆、平等に時間を持っています。極論を言うと、自分のこと以外に時間を取られたくないと思う人が多いと思います。そのような中でも、作業を依頼して快く受け入れてもらうためには、良好な人間関係を構築する必要があると思います。さきほど留学中、研究室の研究者の方々は皆、決められた時間で自らの作業を終わらせ、帰宅すると言いました。しかしこれは、個々が自己中心的に個人プレーを行っているというわけではありません。そこには、困った時は助け合う、自分が忙しいときは、ほかの人にお願いすることができるといった良好な人間関係がありました。具体的には、研究室のメンバーは、毎朝みんなで朝食を取り、お昼になると、みんなで近くのカフェに行き昼食を取ります。そこに年齢やキャリアの壁はなく、研究室メンバー全員がこのようにして毎日を過ごしていました。また、暇な時間があればメンバー同士でコミュニケーションを取っていました。こうして築かれた良好な人間関係の中では、キャリアに関係なくフラットに意見を出し合い、困った時にはお互いが助け合うということが無理なく、自然に行われていました。このことをきっかけに帰国後は、いろいろな人の話に耳を傾むけ、日頃から関わる人とコミュニケーションを取ることを意識しています。

 また、以前は計画の段階で作業の所要時間などを細かく設定していましたが、現在は作業の大まかな概要だけを書き起こし、計画を立てています。こうすることで一つの作業時間が予想していたよりもかかってしまった場合や作業の優先順位を変えたいとき等も簡単に自分のスケジュールを調整し、より柔軟に行動することができるようになりました。この柔軟性というのはチームでリーダーシップをとる際にも非常に重要だと思っています。自分一人で作業を抱え込んでしまうのではなく、いろいろな人に作業を分配することで作業効率が向上するとともに作業を任された個人の能力が向上します。同時に緊急の場合に自分が常に柔軟に動ける体制を整えることができます。このようなリーダーシップをとる際にも良好な人間関係が重要になってくると感じています。

 

 今回の留学を通じて、本当にたくさんの貴重な経験をすることができました。もちろん楽しいことばかりではありませんでしたが、つらいことや困難を乗り切るためにたくさんの人に助けてもらいました。

 帰国して一か月が経つ今、留学前に比べて、異なる価値観を受け入れる力や日本だけでなく世界を見て、いろいろなことを考えていきたい、いかなければいけないと感じています。なんだか、たった三か月の留学でいろいろ考え方が変わって、なんか痛いやつだなと思われる方ももしかしたらいらっしゃったかもしれませんが、これは実際に三か月の留学を通じて僕が感じたことと成長できたなと感じたことです。

 留学と聞くと、お金(奨学金等でどうにかなる。)や言葉の壁(オンライン英会話半年継続で日常会話はできるようになった。)、文化の違い(外国人の方も同じ人間。偏見を持たないほうがいいのかもしれない。)など様々な障壁があると思われがちですが、つい最近まで”無個性”で他人が敷いたレールの上を歩いてきたこんな僕でも留学ができました。すでに留学に興味があって動き出している方や留学に興味がない方も是非、一つの選択肢として留学を考えてみてはいかがでしょうか。僕は留学には、自分を成長させてくれる価値があると思っています。まあ、海外で生活するというだけでも十分楽しいと思います。(笑)

 正直、現在はグローバル人材という目標が自分にとって大きすぎるものではないのかと思うこともあります(笑)しかし、自分は自分。人は人。自分がやりたいことを日々考えて行きたいと思います。以上、本当に長い文章になってしまいました。。。もし最後まで読んでいただけた方がいらっしゃったら、とてもうれしいです。僕の経験が少しでも皆さんに影響を与えることができれば何よりです。

 

りょう

 

 次回からは、また以前のように旅行記を書いていこうと思っています。帰国はしたものの、留学中に旅行で訪れて、まだ紹介していない都市がいくつかあるのでぜひ紹介させていただきたいと思います。では、また近いうちに。